4. 腎臓あれこれ(コラム)

腎臓の2つの模型

【腎臓病と高尿酸血症】尿酸値と腎臓には深い関係がある?

2024/10/08

腎臓病と関連性がある疾患として、高血圧や糖尿病などが有名です。しかし、実際には、これらの疾患だけではなく、「高尿酸血症」も腎機能低下と密接に関連していることが分かっています。そこで今回は、高尿酸血症と腎臓病の関連性を紹介しながら、それぞれの疾患の特徴や症状、治療のポイントなどをわかりやすく解説します。生活習慣に関連する病態には様々なものがあり、これらの疾患はお互いが複雑に関係しています。

  • 尿酸値が気になる
  • 血圧が高い
  • 血糖値が高い
  • 腎機能低下を指摘された

生活習慣病に関して思い当たることがあるという方は、ぜひ最後までご覧ください。

参考:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023(日本腎臓学会)https://jsn.or.jp/medic/guideline/pdf/guide/viewer.html?file=001-294.pdf

慢性腎臓病(CKD:しーけーでぃー)とは

「腎臓病」とよばれる病気には、急性の腎臓病(急性腎障害)と慢性腎臓病(CKD)があります。急性腎障害とは、数時間~数日の間に急激に腎機能が低下する状態であり、感染症などが原因となって発症するケースがあります。一方、慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が徐々に低下する進行性の病気であり、放置すると腎不全に至る可能性があります。どちらの腎臓病も非常に重要な疾患ではありますが、慢性腎臓病(CKD)の患者数は年々増加しており、日本人のCKD患者数は約1,330万人とも推計されています。※エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023より これは、「成人の約8人に1人はCKD」ということを意味する数字であり、CKDへの対応や治療がいかに重要であるかがわかります。

CKDになるとどうなるのか?

腎臓は体内の老廃物をろ過し、尿として排出する役割を果たしています。血液の浄化装置のようなイメージをもつと分かりやすいかもしれません。血液が腎臓を通過することで、血液中の老廃物が除去され、不要な水分や老廃物が尿として体外に排出されます。このシステムが正常に機能することで、全身を巡る血液をよりクリーンな状態に保つことができます。しかし、腎機能が低下すると、この機能が徐々に失われていきますので、全身に様々な合併症が出現するようになります。このように、腎機能の低下やCKDは、全身に影響を与える疾患であり、早期発見と適切な治療が非常に重要であると考えられています。

高尿酸血症とは

高尿酸血症は、血液中の尿酸値が正常範囲を超えて高くなっている状態を指します。そもそも尿酸とは、プリン体という物質が体内で分解される際に生成される老廃物です。通常、尿酸は腎臓から尿として排出されますが、腎臓病などを含め、何らかの理由で排出が追いつかなくなると血液中の尿酸値が上昇します。つまり、尿酸の排泄がおいつかなくなることで、尿酸値がたまってしまっている状態ともいえます。

高尿酸血症の病態と症状

実は、 高尿酸血症は、初期には自覚症状がないことが多いです。具体的には、尿酸値が7.0mg/dLを超えると、「高尿酸血症」と言われる状態になりますが、この状態になったからといって、すぐに症状が表面化することはありません。そのため、多くの方が高尿酸血症を見逃してしまい、気がついたら病態が進行してしまっているというケースも少なくありません。

だからこそ、定期的な検診や受診を行い、「症状がないうちに高尿酸血症を発見する」ことが非常に重要となります。早期に発見して、食生活(過食や常習飲酒)や運動習慣などの生活習慣改善を行なうことができれば、高尿酸血症の悪化を未然に防止し、腎機能や全身の健康を守ることができます。健康診断やかかりつけ医での検査などを受けていないという方は、ぜひ早めに検診を受けるようにしましょう。

高尿酸血症と痛風の違い

高尿酸血症と勘違いされやすい病気(疾患)が痛風です。「痛風」いう病名が有名であるため、「尿酸値が高い=痛風」と考えている方も多いですが、実際にはそうではありません。高尿酸血症と痛風は関連していますが、同じものではなく、高尿酸血症は、あくまでも、「血液中の尿酸値が高い状態」を意味しており、必ずしも症状を伴いません。しかし、尿酸値が非常に高くなると、尿酸が固まった「結晶」のようなものが形成され、この結晶が関節に沈着することで、痛風発作を引き起こすようになります。

高尿酸血症の全身合併症

高尿酸血症で注意すべき症状は痛風だけではありません。高尿酸血症は、痛風以外にも、様々な全身合併症を引き起こす可能性があります。例えば、高尿酸血症は高血圧、糖尿病、心血管疾患などのリスクを高めることが知られています。また、尿酸結石とよばれる尿路結石症(尿管に結石が詰まってしまう)のリスクも高まるため、尿酸値の管理は全身の健康維持において非常に重要になります。さらに、尿酸結晶が腎臓に沈着することで腎機能が低下しやすくなるだけではなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病と相まって、腎臓病(CKD)のリスクが増大してしまいます。

慢性腎臓病と高尿酸血症の関係

先にも紹介したように、慢性腎臓病(CKD)と高尿酸血症は密接に関連しています。CKD患者さんは腎機能が低下しているため、尿酸の排泄が低下し、高尿酸血症を発症しやすくなります。また、高尿酸血症自体が腎機能をさらに悪化させる要因となるため、CKDの進行を早めるリスクがあります。このように、CKDが高尿酸血症のリスクを高め、高尿酸血症がCKDのリスクを高めるといったような関係性があるため、この「悪循環」を防止していくことが重要になります。CKDの治療においては、尿酸値の管理も重要であり、適切な治療により尿酸値をコントロールすることで、CKDの進行を抑制し、合併症のリスクを軽減できる可能性があります。

早期診断の重要性

高尿酸血症は、症状が出にくい(初期の自覚症状がほとんどない)疾患であり、発見時には病状が進行しているというケースも少なくありません。だからこそ、定期的な健康診断や医療機関への受診が非常に重要であり、「早期発見と早期治療」が、症状を未然に防止するためには必須となります。

風邪や腹痛などの急性疾患の場合、症状が出たときに病院を受診するのが一般的です。しかし、高尿酸血症やCKDは、症状が出にくい疾患であるため、症状が出る前に定期的に検査を受けることが重要です。長く健康診断を受けていないという方や、食事や運動などの生活習慣が乱れている(自覚がある)という方は、まずは早めに検査・検診を受けることをおすすめいたします。

慢性腎臓病の高尿酸血症以外に注意する疾患

CKD患者さんは、高尿酸血症以外にもさまざまな疾患(合併症)に注意が必要です。特に、高血圧と糖尿病はCKDの主要な原因にもなる疾患であり、これらの疾患の管理が、CKDの病態にも大きく関わります。高血圧は、腎臓や腎血管に負担をかけ、腎機能の悪化につながる可能性があります。また、腎機能の低下は高血圧を悪化させる要因にもなります。したがって、適切な降圧薬の使用や生活習慣の改善による高血圧の管理は、CKD治療において非常に重要であり、日々の血圧コントロールは腎機能に大きな影響を与えます。加えて、糖尿病や血糖値にも十分な注意が必要です。

糖尿病を発症すると、慢性的な高血糖状態(血糖値が高い状態)が続くようになり、高血糖状態が腎臓の細かい血管にダメージを与えてしまう可能性があります。このように、高血圧や糖尿病は、CKDの進行を早める(CKDを発症する)原因疾患となる可能性があり、それを予防するためには、生活習慣の改善が非常に重要です。

腎臓病や高尿酸血症を予防するには?

今回は、腎臓病と高尿酸血症の関係性について詳しく解説しました。慢性腎臓病と高尿酸血症には深い関係があり、それぞれの管理を適切に行うことが、全身の健康を保つための秘訣です。さらに、腎臓病や高尿酸血症は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病とも密接に関連しています。しかし、これらの疾患は「自覚症状に乏しい」という特徴があり、早期に発見するためには、定期的な健康診断や医療機関への受診が重要となります。

腎臓の機能を守り、全身の健康を維持するためには、定期的な検査・検診を受け、医師の指導のもとで自己管理を徹底し、長期的な健康維持に努めることが大切です。

jdsc
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