4. 腎臓あれこれ(コラム)

腎臓病を気にして食事をしている人

腎臓病の人が食べてはいけないもの一覧!おすすめの食材や食べ方もご紹介

2024/7/17

腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物や余分な水分、電解質などをうまく排出できなくなるため、食生活には十分注意する必要があります。そこで本記事では、腎臓病の方がとくに注意する必要のある栄養素、食べてはいけないもの(避けるべきもの)、おすすめの食材と具体的な食べ方についてご紹介します。腎臓病の食事療法について、詳しく知りたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

※本記事で紹介する食品は一例です。腎臓病の食事療法は、個々の症状や進行度によって異なります。必ず医師や管理栄養士の指導に従って、適切な食事を心がけましょう。

腎臓病とは?

腎臓は、血液中の老廃物や余分な水分を濾過して尿として排出する、体内の浄化装置のような役割を担っています。そんな腎臓の機能が損なわれる(低下する)病気の総称が腎臓病です。腎臓病は、その原因や進行度によって様々な種類に分けられますが、主な種類としては、以下のようなものです。

腎臓病の種類

腎臓病は、その原因によって大きく2つに分けられます。

  • 原発性腎臓病
  • 続発性腎臓病

原発性腎臓病は、腎臓自体に異常が起こる病気です。糸球体腎炎や多発性嚢胞腎などがこれに該当します。一方で続発性腎臓病は、糖尿病や高血圧などの他の病気によって引き起こされる腎臓病です。糖尿病性腎症などがこれに該当します。

また、病気の進行速度によって、急性腎臓病と慢性腎臓病(CKD)に分けられます。急性腎臓病は、急速に腎機能が悪化する病気で、適切な治療を行えば回復することもありますが、重症化すると生命に関わることもあります。慢性腎臓病は、長い年月をかけて徐々に腎機能が悪化していく病気です。自覚症状が現れにくいですが、放置すると腎不全に至る可能性があるため、早期発見と適切な治療が必要になります。

参照)一般社団法人全国腎臓病協議会

腎臓病の症状

腎臓病の症状は、病気の種類や進行度によって異なりますが、代表的なものとしては、次のような症状があります。

むくみ(浮腫)

腎臓の機能が低下すると、体内の水分がうまく排出されなくなり、むくみが生じることがあります。特に、顔や足首、足などに現れやすく、むくみによって腎臓病が発見されることもあります。むくみが続くような事があれば、早めにかかりつけ医に相談するようにしましょう。

尿の異常

尿の量が増えたり減ったりする、尿が泡立つ、尿に血が混じるなどの異常が見られることがあります。尿に変化がある(尿がなんだか気になる)という方は、早めの受診が推奨されます。

その他症状

倦怠感や食欲不振、血圧の変動、貧血など、腎機能低下によって全身に様々な症状が出現する場合があります。とはいえ、腎臓病は初期には自覚症状がないことが多いため、定期的な健康診断などで早期発見することが重要です。症状が出てからでは病状が進行してしまっている可能性もありますので、早期発見のためには、定期的な検診が欠かせません。特に、糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある方は、腎臓病のリスクが高くなりますので、医師の指示にしたがって、しっかりと検査を行うようにしましょう。

腎臓病の人に食事療法が必要な理由

腎臓病になると、腎臓の機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分、電解質などをうまく排出できなくなります。そのため、これらの物質が体内に蓄積し、様々な症状を引き起こしたり、腎臓にさらなる負担をかけたりする可能性があります。だからこそ、食事療法は、腎臓の負担を軽減し、これらの物質の蓄積を防ぐことで、腎臓病の進行を遅らせ、合併症を予防するために非常に重要となります。

  • 老廃物が蓄積しやすくなるから
  • 電解質バランスの調整が難しくなるから
  • 血圧のコントロールができず高血圧になりやすくなるから
  • 水分バランスの調整が難しくなるから

このような理由から、腎臓病の方は、医師や管理栄養士の指導に基づいて、適切な食事療法を行うことが大切です。食事療法は、腎臓病の治療において、薬物療法と同じくらい重要な役割を果たしていますので、毎日の食生活を見直すようにしましょう。

腎臓病の人が気を付ける必要のある栄養素

腎臓病の食事療法は、腎臓の負担を軽減し、症状の進行を遅らせるために非常に重要です。特に、以下の5つの栄養素は、腎臓病の進行に大きく影響するため、摂取量に注意が必要になります。

タンパク質

腎臓病が進行すると、タンパク質の代謝産物である尿素窒素などをうまく排出できなくなるため、摂取量を制限する必要が出てくる可能性があります。過剰なタンパク質摂取は、腎臓に負担をかけ、病状の悪化を招くこともありますので、「高タンパク質ダイエット」などにも注意が必要です。タンパク質を多く含む食品は、以下のようなものがあります。

  • 肉類(牛肉、豚肉、鶏肉など)
  • 魚介類(マグロ、鮭、エビなど)
  • 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)
  • 大豆製品(豆腐、納豆、味噌など)

カリウム

腎臓の機能が低下すると、カリウムが体内に蓄積しやすくなります。高カリウム血症は、不整脈や心停止を引き起こす危険性もあるため、注意が必要です。カリウムを多く含む食品は、次のようなものがあります。

  • 果物(バナナ、メロン、アボカド、ドライフルーツなど)
  • 野菜(ほうれん草、小松菜、じゃがいも、さつまいもなど)
  • 海藻類(ひじき、わかめなど)

リン

腎臓の機能が低下すると、リンも体内に蓄積しやすくなります。高リン血症は、骨や血管に悪影響を及ぼし、骨折や動脈硬化のリスクを高めます。あまり馴染みのないリンですが、以下のような食品に多く含まれています。

  • 加工食品(ハム、ソーセージ、かまぼこなど)
  • インスタント食品(カップラーメン、レトルト食品など)
  • ナッツ類(アーモンド、カシューナッツなど)

塩分(ナトリウム)

腎臓の機能が低下すると、塩分をうまく排出できなくなります。塩分の過剰摂取は、高血圧やむくみの原因となり、腎臓にさらなる負担をかけてしまうため注意が必要です。特に、慢性腎臓病(CKD)の患者さんの場合、高血圧などの疾患を合併しているケースも多く、より慎重な塩分制限が必要になることもあります。

  • 漬物
  • 醤油、味噌などの調味料
  • スナック菓子
  • 外食や加工食品

また、腎臓の機能が低下すると、水分も体内に溜まりやすくなります。浮腫などが出やすくなってしまうことがあるため、塩分の摂取と共に、水分量にも注意しましょう。

腎臓病の人が食べてはいけないもの一覧

重要なこととしては、腎臓病だから絶対に食べてはいけない食べ物というのは基本的には存在しないということです。食事の量やバランスが重要であり、症状や進行度によって適切な食事は異なります。だからこそ、医師や管理栄養士の指導に基づいて、適切な食事を心がけましょう。その上で、腎臓病の方が特に注意が必要な食品をいくつかご紹介します。

加工食品

インスタント食品、冷凍食品、缶詰、レトルト食品、加工肉、スナック菓子などは、リンや塩分を多く含む傾向があるため、注意が必要です。これらの食品の過剰摂取は、高血圧や高リン血症を引き起こし、腎臓に負担をかける可能性があります。

野菜ジュース・果物ジュース

野菜ジュースや果物ジュースは、複数の野菜や果物を濃縮して作られるため、カリウムや糖分を多く含む場合があります。特にカリウムは、液体状だと体内に吸収されやすいため注意が必要です。特に糖尿病を合併している方の場合、野菜ジュースを含む清涼飲料水には注意が必要です。

バナナ・ドライフルーツ・ベジタブルソース

バナナはカリウムを豊富に含む果物です。腎臓の機能が低下している場合、カリウムの排出がうまくいかず、高カリウム血症を引き起こす可能性があります。毎日バナナを食べる習慣があるという方は、医師や栄養士に相談してみましょう。

また、バナナ以外にも、ドライフルーツやベジタブルソースなどは、水分が少なく、成分が凝縮されているため、少量でもカリウムを多く摂取してしまう可能性があります。

これらの食品は、必ずしも完全に避けるべきというわけではありません。摂取量を制限したり、調理方法を工夫したりすることで、腎臓病の方でも美味しく食べることが可能です。腎臓病の食事療法は、個々の状況によって異なります。必ず医師や管理栄養士の指導に従って、適切な食事を心がけましょう。

腎臓病の人におすすめの食べ物

腎臓病の食事療法では、工夫次第で、美味しくバラエティ豊かな食事を楽しむことも可能です。ここでは、腎臓病の方におすすめの食材と、具体的な調理方法や食事のアイデアをご紹介します。

主食のポイント

主食には、白米よりもたんぱく質が少ない低たんぱく米やでんぷん米がおすすめです。これらはエネルギーを確保しやすく、腎臓への負担を軽減できます。また、低たんぱくパンや低たんぱく麺も、主食の選択肢を広げるのに役立ちます。とはいえ、糖質などの摂取量が多くなることもありますので、血糖値などにも注意が必要です。

主菜のポイント

主菜には、低脂肪・高たんぱく質で、腎臓への負担が少ない鶏むね肉がおすすめです。皮を取り除くことで、さらに脂肪を減らせます。また、白身魚(タラやカレイなど)は、脂質が少なく、良質なたんぱく質を摂取できます。卵は、卵黄に含まれるリンやコレステロールを気にせずたんぱく質を摂取できる卵白を選びましょう。大豆製品の中では比較的リンが少ない豆腐も、適量であれば摂取可能です。

副菜のポイント

副菜には、カリウムの少ないキャベツ、レタス、きゅうり、なすなどを積極的に摂取しましょう。カリウムの多い野菜は、細かく切って水にさらすことで、カリウムを減らせます。わかめやひじきなどの海藻類は、ミネラルや食物繊維が豊富ですが、カリウムやリンも多く含むため、摂取量には注意が必要です。低カロリーで食物繊維が豊富なきのこや、エネルギー源やビタミン・ミネラルが豊富なじゃがいもやさつまいもなどの食品もおすすめです。ただし、いも類はカリウムが多いため、茹でこぼすなどの工夫が必要です。

調理方法のポイント

調理方法にも工夫を凝らすことで、さらに腎臓に優しい食事を作れます。例えば、野菜を茹でる際は、一度茹で汁を捨てる「茹でこぼし」という方法で、カリウムやリンを減らすことが可能です。炒め物を作る際は、油を控えめにし、野菜を多めに使うことで、バランスの取れた食事になります。また、蒸し料理は栄養素を逃さず、素材の味を生かせる調理法です。煮物は、薄味で仕上げることで塩分を抑えることができ、酢の物も、酢の酸味を利用することで減塩効果が期待できます。

加工食品やインスタント食品は、塩分やリン、カリウムなどを多く含む傾向があるため、摂取量に注意が必要です。外食も同様で、塩分や油脂が多くなりがちなので、メニュー選びや量に気をつけましょう。水分摂取は、医師の指示に従って適切な量を摂取するようにしてください。

これらの食材や調理方法を参考に、バランスの取れた食事を心がけ、腎臓病の進行を遅らせ、健康な生活を送りましょう。

腎臓病でも美味しく健康に!食事の工夫で毎日を豊かに過ごしましょう

今回は、腎臓病の方が注意すべき栄養素や避けるべき食品、そしておすすめの食材と調理方法について詳しく解説しました。腎臓病の食事療法は、決して「食べてはいけないものが多い」ということではありません。ご紹介したように、調理方法を工夫したり、食材の組み合わせを考えたりすることで、美味しく、そして栄養バランスの取れた食事を楽しむことができます。

最も重要なことは、「必ず医師や管理栄養士の指示に従って、個々の症状や進行度に合わせた適切な食事療法を行うこと」です。食事療法は、腎臓病の進行を遅らせ、合併症を予防するために非常に重要です。

jdsc
〒112-0002 東京都文京区小石川1-4-1
住友不動産後楽園ビル16階

© 2024 Japan Data Science Consortium Co. Ltd. All Rights Reserved.