監修
東京都済生会中央病院 腎臓内科 医長
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が徐々に低下していく腎臓の疾患です。
CKDは、初期段階では症状がないため、知らず知らずのうちに病状が進行してしまうことも少なくありません。
この記事では、CKDの基本情報、主な原因、症状の認識、診断・治療方法、そして日常生活での注意点などをわかりやすく解説します。
正しい知識を学ぶことで、CKDの進行を遅らせ、より長く健康的な生活を送ることができるようになります。
腎臓病について知りたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。
※2024年5月現在の情報であることをご留意下さい。
参考)一般社団法人 日本腎臓学会 編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
CKDは慢性腎臓病ともよばれる腎臓の疾患です。
具体的な定義としては、以下の1,2のいずれか、または両方が 3 カ月を越えて持続することで診断されます。
GFRというのは、「腎臓の働き」のことであり、このGFRが健康な人の60%未満に低下しているような状態が、CKDの診断基準のひとつとなります。
そんなCKDについて詳しく、わかりやすく解説していきます。
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が徐々に衰えていく疾患(病態)です。
腎臓は、血液中の毒素を「ろ過」するような機能があるため、体の中を巡る血液の浄化などにも関与しています。
CKDを発症すると、腎臓のろ過機能が低下することで、結果として体内に老廃物や毒素がたまりやすくなり、余分な水分を効果的に排出できなくなるなど、全身に様々な症状が出現するようになります。
CKDは初期段階で症状がほとんど表れず、症状に気がついた時には、腎機能の低下が進行してしまっているという場合もすくなくありません。
また、CKDは進行性であり、放置すると腎機能はどんどん低下してしまう可能性があり、最終的には腎不全へと進行し、透析などの専門治療が必要になるケースもあります。
CKDは、腎臓の状態によって、5つの進行ステージに分類されます。
年齢や性別、血液検査の血清クレアチニン値などから、推算GFR (糸球体ろ過量:eGFR)を算出し、その数値とタンパク尿をもとにCGA分類で重症度をステージ分類しています。糖尿病が疑われる場合はタンパク尿ではなく、アルブミン尿を使用します。
ステージ1では、腎臓機能は正常または高値の状態です。
タンパク尿などの具体的な症状がない場合、心血管リスクは低いですが、定期的な健康診断を受けるなど、腎機能低下を早期に発見するような対策が重要となります。
ステージG2は、腎臓機能は正常または軽度に低下している状態と考えられます。
ステージG2も、ステージG1と同様に、タンパク尿(糖尿病疑いの場合はアルブミン尿)が確認されない場合は心血管リスクは低いです。
しかし、腎機能が若干低下している可能性もありますので、特に、糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある方は生活習慣を見直すなど、早めの対応を行っておくことが重要です。
ステージG3になると、腎臓機能は軽度~中等度に低下していると考えられます。
この状態になると、実際にCKDが疑われますので、医療機関で治療をうけていく必要があります。
早期に発見して治療を開始し、できる限り腎機能低下を防いでいくことが大切です。
ステージG4では、腎臓機能は高度に低下していると考えられ、全身に様々な症状が出現する(すでに出現している)可能性があります。
至急治療を開始すべき状態です。
G5は、高度に腎機能が悪化している(もしくは腎不全の状態)と考えられます。
透析などの導入も検討していく必要があるかもしれませんので、専門医による適切な治療が必要になります。
このように、それぞれの重症度はGFRの数値とタンパク尿またはアルブミン尿をもとにCGA分類によってステージ分類されています。
適切な治療や対処をしないと、徐々にステージが進行していく可能性もありますので、「ステージG1だから大丈夫」ということではなく、「ステージ1の段階で分かってよかった」と思えるように、毎日の生活習慣を見直すなど、適切な対応を行うことが重要です。
特に、糖尿病や高血圧などの基礎疾患がある方は、CKDのリスクが高くなりますので、定期的に腎機能の検査を受けるなど、かかりつけ医に相談してみて下さい。
慢性腎臓病(CKD)の発症には多くの原因が関与していますが、生活習慣や生活習慣病が主な原因となります。
CKDは、腎臓そのものの病気によって引き起こされるだけではなく、糖尿病や高血圧などについで発症する可能性があるということを知っておきましょう。
そのため、CKDを予防するために、生活習慣の改善などが必要となるケースも少なくありません。
CKDの一般的な原因としては、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が挙げられます。
これらの疾患は、腎臓の血管に持続的なダメージやストレスを与えてしまうため、腎臓の機能が徐々に低下していく原因となります。
たとえば、高血圧は腎臓の細かい血管に高い圧力をかけ続けることで、血管を傷つけ、腎臓の機能を低下させてしまったり、糖尿病では、高血糖状態が持続することで、腎臓の血管が損傷し、最終的には腎機能が低下していく「糖尿病性腎症」という病態を発症する可能性もあります。
このように、CKDの発症には生活習慣病が深く関与しており、CKDの治療のためには、生活習慣の改善が必要不可欠となります。
CKDは、初期段階では症状がないため、定期的な検診などで発見されるというケースも少なくありません。
腎機能低下が進行すると、むくみやだるさなどの自覚症状が出現しますが、「風邪やつかれ」などとして見過ごされてしまう場合も多く、CKDの早期発見が大きな課題となっています。
ここからは、そんなCKDの症状についてわかりやすく解説します。
初期のCKDでは症状が、まったく感じられないことが一般的です。仮に症状が表れたとしても、通常、疲労感や軽度のむくみ(特に足や足首)、頻尿または夜間尿などであり、受診のきっかけとならない場合も少なくありません。
できるだけ初期症状を見逃さないためにも、定期的な健康診断を受けるなど、血液検査や尿検査の数値を参考にしつつ、早期発見ができるような取り組みが重要です。
CKDが進行すると、全身に様々な症状が出現するようになります。
夜間尿、むくみ、貧血、倦怠感、息切れなどの症状のほか、骨への影響なども出現してくる可能性もあります。
また、体内に毒素がたまりやすくなり、皮膚症状なども合併する場合もあります。
CKDは、症状がない初期段階でいかにして進行を予防するかということが重要になります。
CKDの診断には主に、血液検査や尿検査が用いられます。
血液検査では、クレアチニン(血清クレアチニン)のレベルを測定して、腎機能を評価していきます。
また、尿検査では、尿中にタンパク質が存在するかどうかを調べることで、タンパク尿の有無を確認します。
腎臓が健康な場合、タンパク質はほとんど尿に漏れ出ないため、尿中タンパクの検出は重要な指標となります。
明確な自覚症状がなかったとしても、血液検査や尿検査で腎機能の低下を早期に発見することが可能です。
CKDの治療の目的は、病状の進行を遅らせるだけではなく、出現した症状を適切に緩和し、生活の質を向上させることにあります。
浮腫や頻尿などへの対応だけではなく、血圧や糖尿病などに対する治療戦略も非常に重要になります。
特に、糖尿病などの生活習慣病に関連して発症するCKDの場合、原疾患(この場合糖尿病)の治療がとても大切となり、血糖値のコントロールが腎機能低下の抑制にも繋がります。
治療効果を最大限に高めるためには、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善も重要です。
食生活の改善だけではなく、禁煙や禁酒、適切な水分摂取(水の飲み過ぎにも注意)、定期的な運動、ストレス管理なども大切です。
このように、患者さん一人ひとりに必要なCKDの治療は異なります。
薬を使って血圧の管理や血糖値の管理を行うだけではなく、できる範囲から少しずつ生活習慣の改善に取り組むことが重要です。
今回は、慢性腎臓病(CKD)の基本的な病態から治療方法までを幅広く解説しました。
CKDの管理においては、早期発見と日々の生活習慣が非常に重要になります。
つまりは、早期発見と早期治療です。
特に、CKDは症状が表れないため、定期的な健康検査が早期発見には欠かせません。
また、糖尿病や高血圧などの基礎疾患があるという方の場合、CKDのリスクが高くなるということを認識しておき、だるさやむくみなどが気になった時には、できるだけ早くかかりつけ医に相談できるようにしておくことが大切です。
毎日の生活習慣が、CKDや腎機能に大きな影響を与えます。
健康的な食事、適切な運動、十分な睡眠、ストレスの管理など、バランスの取れたライフスタイルを意識しましょう。
CKDは症状が出現しにくい疾患だからこそ、意識的に健康診断をうけるなど、早期発見・早期治療ができるように心がけて下さい。